ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミーの『くるみ割り人形』全三幕 エピローグ付(Bunkamura オーチャードホール)を鑑賞しました。
〝ワガノワのくるみ〝をぜひ観たい!と思ったのは理由があります。
Contents
『くるみ割り人形』とワガノワ・バレエ・アカデミー
『くるみ割り人形』は、帝政ロシア時代の1892年にマリンスキー劇場で初演され、作曲者チャイコフスキー自身も立ち会っています。
その栄えある舞台は、帝室バレエ団(現マリインスキー劇場バレエ)と帝室バレエ学校(現ワガノワ・バレエ・アカデミー)により上演されました。
ワガノワ・バレエ・アカデミーとこの『くるみ割り人形』は切っても切れない関係にあり、本家本元、十八番でもある作品なのです。
ワガノワ・メソッドの創始者アグリッピーナ・ワガノワ
ワガノワ・バレエ・アカデミーは、1738年帝政ロシア時代に設立されました。
アグリッピーナ・ワガノワの功績を称えて、1957年よりその名で呼ばれるようになり、今日に至っています。
このワガノワという方、現役ダンサー時代には色々と苦労が多かったようです。
現役引退後、教師として優れた功績を残しました。
ワガノワメソッドが生まれた背景や彼女の功績はこの本が面白いです。
ワガノワメソッドは、完全にハイレベルのプロ・ダンサーを育てるためのメソッドです。
そのため、バレエ向きの身体でトレーニングに耐えられることが前提になっているそうで、欧米人とは骨格をはじめ、身体が違う日本人には合わないと考えられる向きもあるようです。
ワガノワ・メソッドに異を唱える一方で、メジャーな印象があるのは英国ロイヤルのメソッドです。
私の先生も、ロシアバレエはあまりお好きではないようです。
私が、マリンスキーが好きなのは、演奏の影響が大きいかもしれません。
ゲルギエフの指揮による『白鳥の湖』は、冒頭から冷たく澄んだ空気が伝わってきて、序曲だけであっちへ連れていかれます。。。
ともかく、マリンスキー劇場バレエをはじめ、ロシアの優れたバレエダンサーはこのワガノワ・メソッドで育っているため、マリンスキー大好きな私としては、ワガノワ・バレエ・アカデミーにも興味深々なのでした。
ワガノワでは、才能がとても大切に育てられている
さて、舞台が始まり、一幕は、シュタールバウム家のクリスマスパーティー。
7~10歳くらいの本当に可愛い子たちが、無邪気な子どもらしい踊りを披露してくれました。
心の動きが、美しい身体の動きとして表現されるように。
バレエの基本を大切に、悪い癖がつかないように。
子どもたちの身体の発達に合わせ、負担をかけないように。
それはそれは、繊細なほどに配慮されているのがよくわかりました。
音楽の場合・・・
とかく目先のコンクールや発表会や試験に全てを賭ける痛々しい姿が当たり前になっていまして・・・
ワガノワでは、当たり前なことが当たり前に行われているのが、とても嬉しかたです。
10年後はマリンスキー劇場で踊っているに違いないアンナ・シャローワ
みんなそれぞれ凄かったですが・・・
少女マーシャ(日本では通常クララと呼ばれる役)を踊ったアンナ・シャローワちゃんが凄かった。
感情の動きが手にとるように伝わる凄い表現力で、オーラと存在感は、既にプリマの貫禄でした。
まさに、踊るために生まれてきたって感じ。
10年後に、マリンスキーの舞台でオデットを踊る姿が浮かぶようでした。
選ばれるのは伝統のため
ワガノワ・バレエ・アカデミーでは、毎回の試験でふるいにかけられ、成績が芳しくない生徒は退学していくことになります。
そこまで厳しいのは、やはり、「ロシアバレエの伝統を継承するため」。
だから、ワガノワで選ばれる子供たちは、ロシアバレエの継承者として育てられるわけです。
その方針は、この日の舞台からも十分に伺われました。
少女マーシャを踊ったアンナ・シャローワちゃんは、すでに将来のプリンシパル候補となっているに違いありません。
子供たちを大切に育てるのは、その子の個性を育てるというより、故障でもして、優れた才能が育たないのは、国家の威信にさえ関わるです。
だから、本当に、ロシアバレエの継承者として生きることが幸せな人生につながる子供たちだけがいるところだと感じました。
いや~、帝政ロシアからソビエト連邦時代を経て、ロシアになっても、やはり、守るべきものへの徹底ぶいはさすがです。
マリンスキー・バレエの素晴らしい踊りは、こうして実現しているのですね。。。
そんな厳しい修練の日々を過ごす彼らの踊りは、どこまでも、純粋で美しく軽やかで、天使のようでした。
今日の小さなダンサーたちの幸せなバレエ人生を願ってやみません。
~♪~
「くるみ割り人形」全三幕 エピローグ付
作曲:P.チャイコフスキー
振付:V.ワイノーネン
ロシア国立 ワガノワ・バレエ・アカデミー
指揮:ワレリー・オフシャニコフ
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
合唱:江東少年少女合唱団
2016/1/22(金)19:00開演 Bunkamura オーチャードホール
ワガノワ・バレエ・アカデミー日本公式サイト
⇒ ようこそ!ワガノワ・バレエ・アカデミー日本公式サイトへ
ワガノワ・バレエ・アカデミー公式サイト
⇒ Vaganova Ballet Academy
☆配役☆
プリンセス:エレオノーラ・セヴェナルド
王子:パヴェル・オスタペンコ
少女マーシャ:アンナ・シャーロワ
フリッツ:ニキータ・ザハロフ
ドロッセルマイヤー:ワディム・シローチン
ネズミの王様:セルゲイ・オスミンキン
道化:マルコ・ユリウス・ピャタリ・ユセラ
人形:アンナ・スミルノーワ
ムーア人:ティムル・ディムチコフ
雪の精:ヴラダ・ボロデュリナ、ユリア・ゾロティフ
スペインの踊り:クセーニャ・リング、ローレンス・ジャイムス・ランバート
アラブの踊り:ダリア・ボシュコーワ
中国の踊り:アンナ・スミルノーワ、ティムル・ディムチコフ
トレパック:アリーナ・スホルキフ、マリア・トゥルエフツェワ、イリア・モギルニコフ、ステパン・コロレフ
パドトロワ:ポリーナ・ザイツェフ、ソフィア・ヴァリウリーナ、ヤン・ベーギシェフ