浜松国際ピアノコンクール第1次予選を聴いて

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第10回浜松国際ピアノコンクールが始まりましたね。

ライブ配信、録音のオンデマンド配信ともにこちらから聴くことができます。

第10回浜松国際ピアノコンクール公式ホームページ。アクトシティ浜松で3年に1度開催されるピアノコンクール。

・・・コンクールは問題・弊害いっぱい!
コンクールからホロヴィッツやルビンシュタインのようなピアニストは生まれない!

・・・とか言いながらも、始まってしまうとやっぱり聴いてしまいます。

聴いてしまうと、やっぱり夢中になって次々・・・結局みんな聴いてしまうんですよ。

そして、素晴らしいと思うピアニストは紹介したくなります。

第1次予選通過者は決まりましたが、それとは関係なく、私の印象に残った、ぜひ聴いて欲しいピアニスト・演奏をご紹介します。


この記事を書いた人
伊奈葉子 / Yoko Ina Piano Teacher

心と頭と身体をチューニングすればピアノはもっと自由に弾けます。演奏向上と故障予防に1日15分のウォーミングアップ。悩めるピアノ弾きを笑顔にするレッスンをしています。詳しいプロフィールはこちら


第10回浜松国際ピアノコンクールとは

本題に入る前に、浜コンをおさらいしましょう。

浜コンこと浜松国際ピアノコンクールは、浜松市長さんが実行委員会会長として開催されます。

浜松国際ピアノコンクールは、1991年に浜松市制80周年を記念して、楽器と音楽のまちとしての歴史と伝統を誇るにふさわしい国際的文化事業としてスタートし、以後3年毎に開催しています。
世界を目指している多くの若いピアニストに日頃の研鑽の成果を披露する場の提供と彼らの育成、世界の音楽文化の振興、国際交流の推進を目的としています。浜松国際ピアノコンクール公式HPより

第10回となる今回の審査委員長は小川典子さん。

審査員はエリソ・ヴィルサラーゼやディーナ・ヨッフェ、ラファウ・ブレハッチと1位なし2位を分け合ったアレクサンダー・コブリンさんなど国際的ピアニストで構成されます。

ベストセラー恩田陸『蜜蜂と遠雷』はこの浜コンがモデルとなっていて、そのためか今回は、開催前からチケット完売の日が続出する人気ぶりです。

自由度の極めて高い第1次予選課題曲

コンクールの課題曲は、そのコンクールを表すので興味深いものです。

第10回の浜コンの第1次予選課題曲は、

練習曲1曲以上を含む自由な選択(出版されている作品に限る。)により演奏時間20分以内で演奏する。公式ページより

事実上、課題は練習曲1曲という自由度の高さから、コンテスタントは自らの良さを存分に発揮し、アピールできるようにととても多彩で興味深いプログラムになっています。

プログラム見れば、そのピアニストが何を目指しているのかわかるというもの。。。

私の好きなピアニストのタイプ

さて、おすすめピアニスト・演奏の前に、私はそもそもどういう演奏・演奏家が好きなのか、改めて考えてみました。

過度にアグレッシブなタイプ、我の強い演奏は苦手です

好きなタイプというのは、暗黙のうちに嫌いなタイプを対極に置いて語られます。

私が苦手なのは、こんなタイプです。

  • 過度にアグレッシブな演奏
    ―聴いていて、闘いが好きなら音楽より格闘技すればいいのに・・・と感じるタイプ。
  • 虚栄心や自己顕示欲を満足させたい人
    ―作曲家への敬意に欠ける、我の強すぎる演奏はクラシックとしてどうかと思います。
  • 唸ったり、気張ったり、頑張ったりする人
    ―クラシック音楽というのは、その発祥・発展の歴史から言ってノーブルな性格を持っているので、演歌の”こぶし”を彷彿させるような表現はいかがなものかというのが個人的見解です。

純粋に音楽とピアノを愛するピアニストを敬愛しています

音楽への姿勢というのが演奏そのものということになってきます。

私が感動する演奏、好きなピアニストというのは、結局、この3つを満たしているのです。

  • 音楽への献身
    ―プロ・ピアニストの姿勢として音楽への献身は第1条件です。
  • 作曲家と作品への敬意が感じられる演奏
    ―作品の世界、つまりミクロコスモスをそこに実現するために自分はピアノを弾くという演奏が好きです。
  • 響きが美しい
    ―ピアノを美しく響かせることができるというのが、ピアノを愛しているということだと思うのです。

第1次予選を聴いて印象に残ったおすすめピアニストたち

・・・というわけで、すっかり前置きが長くなりましたが、私の印象に残ったピアニストを、結果とは全く無関係にご紹介します。

順番は演奏順です。

演奏はこちらからどうぞ。

第10回浜松国際ピアノコンクール公式ホームページ。アクトシティ浜松で3年に1度開催されるピアノコンクール。

アレクセイ・ゼーノン(No.95 第1日目)

1995年生まれ ロシア。ピアノはシゲル・カワイ。

♪プログラム

  • F. ショパン  4つのマズルカ Op.17
  • S. ラフマニノフ  絵画的練習曲 ハ短調 Op.39-1
  • F. ショパン 練習曲 ロ短調 Op.25-10 

演奏時間20分の半分以上をショパンのマズルカが占めるというコンクールではチャレンジングなプログラムながら、順に演奏される4つのマズルカに惹きこまれ、ラフマニノフとショパンのエチュードで鮮やかに決められ、地味ながら実力が伺われる正統派の演奏です。

第1次予選通過しました。

ルイス・カルロス・フアレス・サラス(No.26 第1日目)

1996年生まれ メキシコ。ピアノはシゲル・カワイ。

♪プログラム

  • W. A. モーツァルト アダージョ ロ短調 K.540
  • C. ドビュッシー 練習曲 第9番 「反復音のための」
  • R. シューマン アレグロ ロ短調 Op.8

私としては、今回イチ押しのピアニストです。

素朴なモーツアルトが心に沁みます。

ユーモアとアイロニーが愉快なドビュッシー。

そして、必聴なのがシューマンです。
この『アレグロ』という曲は音が多くて、ガチャガチャになる演奏が多いのですが、こんなにすっきりと繊細に、しかもコロコロと変わる気分をそのまま表情豊かに演奏に出合えることは極めて稀です。

時間のない方は、このアレグロだけでもお聴きください(9’30くらいから)。

なんで、通過できないのか「???・・・」な人いっぱいだと思いますが、それがコンクールです。

ドミトロー・チョニ(No.15 第3日目)

1993年生まれ ウクライナ。ピアノはスタインウェイ。

♪プログラム

  • F. リスト 「巡礼の年 第1年 スイス」より ジュネーブの鐘
  • G. リゲティ 練習曲 第5番 「虹」
  • A. スクリャービン 練習曲 嬰ト短調 Op.8-9
  • F. シューベルト/F. リスト 魔王

凍るように澄んだ空気が伝わるような「ジュネーブの鐘」から、リゲティとスクリャービンのエチュードと「魔王」を、それぞれのクオリティの高さもさることながら、一連のオムニバスのように構成した素晴らしい時間でした。

フィリップ・リノフ(No.47 第4日目)

1999年生まれ ロシア。ピアノはスタインウェイ。

♪プログラム

  • F. リスト 超絶技巧練習曲 第4番 「マゼッパ」
  • A. スクリャービン ピアノ・ソナタ 第5番 Op.53 

不思議な魅力のピアニストです。それがスクリャービンにはよく表れ、とても興味深く聴きました。誤解を恐れずに言えば、色っぽいというか艶っぽいというか・・・

通過できませんでしたが、彼に出会えたのは大きな喜びです。

まだ19歳ですから、これからピアノはもちろん、教養を深めて化けるのを楽しみにしています。

ジャン・チャクムル(No.10 第5日目)

1997年生まれ トルコ。ピアノはシゲル・カワイ

♪プログラム

  • D. スカルラッティ ピアノ・ソナタ イ短調 K.175(L.429)
  • F. J. ハイドン アンダンテと変奏曲 へ短調 Hob.XVⅡ:6
  • F. ショパン 練習曲 ハ長調 Op.10-7
  • F. リスト 超絶技巧練習曲 第12番 「雪かき」

トルコは、ヨーロッパ的にはアジアですが、日本からは遠く・・・そのためかエキゾチックな雰囲気を感じる面白い演奏でした。

もうちょっと聴きたいなと思ったら通過したので、2次の演奏を楽しみにしています。

上原琢矢(No.28 第5日目)

1997年生まれ 日本。ピアノはシゲル・カワイ。

♪プログラム

  • J. S. バッハ/E.ペトリ 羊は安らかに草をはみ BWV.208
  • F. リスト 超絶技巧練習曲 第5番 「鬼火」
  • F. リスト バッハの主題による幻想曲とフーガ

PC作業しながらBGMに浜コンライブを流していたのですが、バッハの美しい響きに思わず「誰?」と確かめました。日本人だったので驚いたのは、いい意味で全く日本人らしくなかったからです。

ぐぐったら7歳から横山幸雄さんに師事とあり、納得しました。

リスト『鬼火』はやや苦しそうですが、重さを感じさせない浮遊する響きが美しく、彼がファツィオリで弾くのを聴きたいですね。

リスト『バッハの主題による幻想曲とフーガ』の深い世界を正面から表現しようという姿勢が素晴らしいです。この曲はボコスカ叩いたり、鍵盤に指を押し付けたような重苦しい演奏に遭遇することが多いですが、そういう小手先でごまかそうとするところが全くなく、聴いていてとても気持ちのよい演奏です。

筋が良いというか・・・妙な癖がなくて、大きな可能性を感じるピアニストです。残念ながら通過できませんでしたが、これから楽しみにしています!

アナ・ゴガワ(No.19 第5日目)

1992年 ジョージア。ピアノはシゲル・カワイ。

♪プログラム

  • D. スカルラッティ ピアノ・ソナタ ニ短調 K.1(L.366)
  • R. シューマン 暁の歌 Op.133
  • S. ラフマニノフ 絵画的練習曲 ニ長調 Op.39-9

美しいスカルラッティは女性ならではのしなやかな演奏。

コンクールという場でシューマン『暁の歌』を弾くとは驚きですが、演奏の随所に思わずゾクっと鳥肌が立つような感動を覚えました。

クララ・シューマンはどういう演奏したのだろうとふと想うような演奏でした。

残念ながら通過できませんでしたが、スカルラッティとシューマン『暁の歌』は必聴です!

~♪~

以上、私の印象に残った、おすすめピアニスト・演奏です。

好き放題書きましたが、ここで演奏するのは大変なことです。

コンテスタントのみなさん、素晴らしい演奏をありがとうございました。

通過した方も、そうでない方も、さらなるご活躍をお祈りしていています。。。

データ|第10回浜松国際ピアノコンクール

第10回浜松国際ピアノコンクール

【開催スケジュール】
第1次予選:2018年11月9~13日
第2次予選:2018年11月15~17日
第3次予選:2018年11月19~20日
本選:2018年11月23日~24日
入賞者披露演奏会:2018年11月25日

*委嘱作品作曲家作品講座:2018年11月18日
*審査委員によるマスタークラス:2018年11月22日

【場所】アクトシティ浜松

【公式HP】http://www.hipic.jp/

演奏はこちらからどうぞ。

第10回浜松国際ピアノコンクール公式ホームページ。アクトシティ浜松で3年に1度開催されるピアノコンクール。

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