大エルミタージュ美術館展2017|時代と国が画家を育て名画が生まれる

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”本物”は裏切らない

魅力的かつ挑発的なこのことばにくすぐられて出掛けた大エルミタージュ美術館展

はたして・・・

本物でした。

ヨーロッパ・ルネサンス、バロック、ロココが好きな人は絶対に観るべき!

これから行く人の参考になるようにレポしま~す。


この記事を書いた人
Ina / 伊奈葉子 ヴィジョン・コンサルタント

食べるように本を読むInaです。
ネットで得られるのは情報、本で得るのは知識。食事が消化吸収ののち栄養になるように熟読は教養を深めます。ピアノと音楽と自然、美しいものと美味しいものと紅茶が大好きです。慶應義塾大学文学部卒業。詳しいプロフィールはこちら♪


世界三大美術館のひとつエルミタージュ美術館

エルミタージュ美術館は、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクにあり、パリのルーヴル美術館、ニューヨークのメトロポリタン美術館と並んで世界三大美術館のひとつに数えられます。

約310万点の所蔵品を誇り、絵画だけで約1万7千点を有する美術館です。

エカテリーナ2世の隠れ家としてはじまったエルミタージュ美術館

世界有数の規模を誇るエルミタージュ美術館のはじまりは、帝政ロシア・ロマノフ王朝の女帝エカテリーナ2世です。

彼女が在位から2年後の1764年にベルリンの実業家から取得した317点の絵画コレクションがはじまりと言われています。

しかも、その美術品をエカテリーナ2世はひとりで楽しんでいたのですよ。

こんな言葉を残しています。

これらの名画に見とれているのは私とネズミだけ・・・

”エルミタージュ”とは、そもそもフランス語で「隠れ家」の意味。

世界三大美術館のひとつが、エカテリーナ2世の隠れ家として始まったというのですから、帝政の凄さであり、大帝の凄さです。

ちなみに、ロシア帝政の時代の中で大帝と呼ばれるのは2人だけ。

ひとりがピョートル1世でもうひとりがこのエカテリーナ2世です。

話を戻して・・・

現在、所蔵している約310万点のうち、半数の作品がエカテリーナ2世の在位中に得られたものというのですから、何とも凄い話です。

私蔵品だったそれらの作品ですが、その後20世紀初めに起こったロシア革命によって国有化され現在にいたっています。

大エルミタージュ美術館展2017の見どころはオールドマスターの巨匠たちの作品

会場は六本木ヒルズ内52F森アーツ・ギャラリー

今回の大エルミタージュ美術館展では、310万点の所蔵品のうち常設展示作品より選び抜かれた85点の油彩画が来日しました。

特徴はふたつあります。

  1. オールドマスター西洋絵画の巨匠たち。
  2. 国・地域と時代別展示で時空を旅できる

順に解説しますね。

オールドマスターとは

大エルミタージュ美術館展2017のキーワードは「オールドマスター」です。

オールドマスターとは、16世紀ルネサンスから17世紀バロック18世紀ロココの巨匠たちを指しており、巨匠と時代の関係はこんな感じです。

  • 16世紀ルネサンス:ティツィアーノ、クラーナハetc
  • 17世紀バロック:レンブラント、ルーベンス、ヴァン・ダイクetc.
  • 18世紀ロココ:ヴァトー、ブーシェetc.

ルネサンスとバロックとロココの選りすぐり名画が一堂に集まった展示は、何とも華やかで豊かになります。

絵画は国・地域と時代から生まれることがよくわかる展示

今回の展示のもうひとつの面白さは、国・地域と時代の分類です。

全85枚の巨匠たちの絵画は、このような構成で展示されていてそれがまるで絵画を見ながら16~18世紀ヨーロッパを旅しているようでとても面白かったのです。。

  1. イタリア:ルネサンスからバロックへ
  2. オランダ:市民絵画の黄金時代
  3. フランドル:バロック的豊穣の時代
  4. スペイン:神と聖人の世紀
  5. フランス:古典主義的バロックからロココ
  6. ドイツ・イギリス:美術大国の狭間で

簡単に言うと、16世紀イタリア・ヴェネツィアの経済発展を基盤として発展したルネサンス絵画が、その後オランダ・フランドル・スペイン・フランスの経済発展とそれぞれの国での絵画の発展の様子がリンクしつつ、独特のスタイルを生み出している様子がとても面白いのです。

絵画展に来る度に思うのは・・・

芸術は富が生む

です。

では、私Inaの私感を綴ります。

プロローグ|エカテリーナ2世が迎えてくれました

館内に入ると迎えてくれたのは、エカテリーナ2世その人。

ウィギリウス・エリクセン『戴冠式のローブを着たエカテリーナ2世の肖像』

ラッキーなことに期間限定で撮影OK!でした。(4月3日(月)~28日(金)の月~金・平日のみ)

オールドマスター西洋絵画の巨匠たち各国別展示

本編は、16~18世紀イタリア、オランダ、フランドル、スペイン、フランスと続きます。

イタリア:ルネサンスからバロックへ

イタリアルネサンスは明るいです。のびのびしていて大らかで心が背伸びするような気持ちよさがありますね。

ティツィアーノ『羽飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像』が目玉のようですが、私は、カルロ・ドルチ『聖チェチリア』が好きです。

カルロ・ドルチは国立西洋美術館の常設展に『悲しみの聖母』という目の覚めるようなラピス・ラズリの青い衣裳をまとった女性の絵が有名ですけれど、この『聖チェチリア』も小さなオルガン(と思われる)を弾く女性の上品で高貴な表情と衣裳の美しさに目を奪われます。

そのほか、ルネサンスのメインテーマ『聖家族』(byバトーニ)や、いくつかある都市景観図ではカルレヴァリス『ヴェネツィア、運がに面したドゥカーレ宮殿前の眺め』の空と雲の美しさが印象に残りました。

オランダ:市民絵画の黄金時代

オランダは、17世紀に西洋美術史上類を見ないほどの驚くべき質と量の絵画が生み出され、やさしい雰囲気の風俗画・風景画・静物画は富裕層だけでなく広く市民にも親しまれました。

イタリアルネサンスとオランダ絵画がこのように並ぶと、まるでイタリアチェンバロとオランダチェンバロを聴き比べるような質感の違いを感じます。

どう違うかというと、

  • イタリアチェンバロは軽く、明るい。
  • オランダチェンバロは深く重厚感がある。

その質感はそのまま絵画にも感じました。

ここでの目玉はハルス『手袋を持つ男の肖像』のようですが、私はその隣のホントホルスト『陽気なヴァイオリン弾き』の愉快さに魅了されました。ヴァイオリンを小脇に抱えて、右手には弓ではなくアルコール(?)の入ったグラス・・・笑えますよ。

ヘーム『果物と花』は、鮮やかで瑞々しい果実と花かと思いきやよく見るとしおれたものがあり、現世のはかなさが主題だと解説にありました。

ネール『月明りの川の風景』、ライスダール『砂丘のある風景』が並んだ壁は、うちにこの絵を欲しいな~と想う心地よさです。

フランドル:バロック的豊穣の時代

北方バロックの巨匠ルーベンスとその工房の時代、カトリックを復興すべく宗教建築が盛んでもありました。

ルーベンス『マリー・ド・メディシスの戴冠式』、『ルーベンスと息子アルベルト』はさすがです。

面白かったのは、有名なブリューゲル(2世?)『スケートをする人たちと鳥罠のある冬景色』。

解説によると、スケートを楽しむ人々の足元でいつ氷が割れるとも限らず、鳥たちも今にも捕らえられそうな様子は、人生が不安定で不確実なものであることを表す寓意的な作品との事。

スペイン:神と聖人の世紀

”太陽が沈まぬ国”と言われた16世紀のスペインですが、皮肉なことに絵画の黄金時代は隆盛が陰る17世紀なのです。

”禁欲的で敬虔なカトリック信仰を導く宗教美術が数多く生み出された”と解説にありましたが、今回展示された5点の作品すべてが宗教画でした。

「困った時の神頼み!」は人間の本性なのだと思いましたね。

その神が何であるかは、国によるわけですが、スペインは当然イエス・キリストです。

暗闇の中でキリストに光の当たっている絵を観ると、まさに神は光であり、暗い時代に光を求め、神を求めるのだな~と苦笑するコーナーでした。

フランス:古典主義的バロックからロココ

フランスはルイ14世の厳格な秩序と安定した古典主義の時代と、その後のルイ15世の優雅で軽快で遊び心のあるロココの時代にはっきり分かれます。

やはりフランスの真骨頂はロココですね。

クロード・ロラン『トビアと天使のいる風景』は印象に残る1枚です。

ロベール『運河のある建築風景』は、構図の面白さによって壮大な空間効果を生み出していたというか、とても立体的で奥行きがあり、二次元を超えて三次元空間を生み出すような素晴らしい作品でした。私としては、今回の展示で一番印象に残ったものです。

その他、ランクレ『春』・『夏』や、シャルル=アンドレ・ヴァン・ロー『スペイン風の読書』も柔らかく明るくフランス的な軽やかさがあふれる作品でした。

シャルルと言えば・・・

六本木ヒルズ広場でパンジーと戯れるシャルル

ドイツ・イギリス:美術大国の狭間で

今回の美術展のポスターにもなっているクラーナハ『林檎の木の下の聖母子』。

その他カウフマン『パリスの愛を受け入れるようにヘレネを説得するヴィーナス』も美しかったです。

まとめ

エカテリーナ2世が迎えてくれた大エルミタージュ美術館展は、16世紀から18世紀ヨーロッパの国・地域と時代を縦横に旅するとても興味深い展示です。

時代精神と地域や国の特徴は、画家に影響を与え、その空気が作品を生みだすことを肌で感じられるものでした。

美術展の中には、いくつかの目玉作品と引き立て役で構成されるものもありますが、この大エルミタージュ美術館展はバレエならさしづめ”エトワール・ガラ”のように、主役級の作品ばかりが勢ぞろいしたとても贅沢なものです。

西洋絵画が好きな人も、そうでない人も、この記事を読んだ方は是非足を運んでみてください。

豊かさは心から・・・です。

六本木ヒルズタワー前から東京タワーを臨む。

開催概要

大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち

  • 会期:2017年3月18日(土)-6月18日(日)

    休館日:5月15日(月)

  • 開館時間:午前10時-午後8時(火曜日は午後5時まで、但し5/2は午後8時まで)

    ※入館は閉館の30分前まで

  • 会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ 森タワー52階)

    〒106-6150 東京都港区六本木6-10-1

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