ヴァディム・ホロデンコ みなとみらいアフタヌーンコンサート2019前期

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梅雨の晴れ間、久しぶりに燦々と陽射しが降り注ぐ横浜みなとみらいでヴァディム・ホロデンコを聴きました。

一昨日の豊洲とはあらゆる意味で違う環境でしたが、ホロデンコはやはりホロデンコ。

期待に違わず素晴らしい演奏を聴かせてくれました。

豊洲でのリサイタルの記事はこちら。

ヴァディム・ホロデンコ ピアノリサイタル2019|音楽家の使命と存在意義
梅雨空の豊洲でヴァディム・ホロデンコを聴きました。 初めてライブを聴いたのは2008年6月。前年に開催された第3回仙台国際コンクールヴァイ...

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この記事を書いた人
伊奈葉子 / Yoko Ina Piano Teacher

音楽と自然と読書とお茶時間をこよなく愛しています。ピアノで故障する人、無駄に苦しむ人をなくし、もっと豊かな音楽を!
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「新世代のスーパー・ピアニスト」に納得

このリサイタルは、みなとみらいアフタヌーンコンサート2019前期シリーズのひとつで、ホロデンコは

「新世代のスーパー・ピアニスト」

として登場しました。

私としてはこのコピーに激しく違和感を感じていたのですが・・・

会場に着いて納得しました。

一昨日の豊洲と客層が全く違うのです。

平日昼間のコンサートということで、年齢層はぐっと上。私は決して若くはないのですが、聴衆のほとんどがはるかに大先輩です。

豊洲に集まったのはショパン=ゴドフスキを楽しみにしていた人たち、しかも「ピアノ弾き」が多かったけれど、みなとみらいはホロデンコの名前も初めてな方が大半な雰囲気。。。

なるほど、彼らにとって孫世代になるホロデンコは

「新世代」

ですし、

「スーパー・ピアニスト」

の謳い文句が(集客のために)妥当だと納得したのでした。

・・・ホロデンコを聴きたくて、期待120%でやって来た私はやや不安に。。。

静寂に息を飲んだ|ベートーヴェン《月光ソナタ》

しかし、不安と居心地の悪さは演奏が始まった瞬間に吹き飛びました。

かつての気まずそうな不器用なお辞儀はどこへやら、すっかりマエストロの風格をたたえたホロデンコはステージ後ろの聴衆への気遣いも忘れず、座るや否や弾き始めました。

1楽章、バスだけでこの曲全てが浮かびあがるように演奏を作っていて、3連符はバスの倍音が波のように揺れるがごとく、あるいは風の音のように聴こえます。

この曲の一般的な演奏としてよく聴かれる(というかよく教わる)

  • バス
  • (内声の)3連符
  • (主にソプラノの)メロディー

みたいな切り分けではなく、まるでオーケストラのように、しかもピアノだからこそ可能な表現で幻想的な雰囲気を醸しながらドラマを作っていました。

息を飲む静寂に惹きこまれる聴衆・・・

2楽章、素朴でシンプルな演奏は、自然を愛したベートーヴェンの優しさと彼の人柄をそのままに聴衆の心に近づきます。

3楽章、よく聴かれるような激しく叩きつける演奏ではなく、ピアノの響きそのものでアパッショナートな性格を表現していました。

16分音符のアルペジオはペダルなしからごく少なめでシンプルに歌い、和音は豊かな響きでメロディーラインを歌う・・・

ピアノが(打楽器ではなく)とてもリリカルな楽器であることを教えてくれる演奏でした。

その不思議な世界に、ホロデンコを初めて聴く聴衆たちも「スーパー・ピアニスト」であることを納得したように盛大な拍手でした。

コンサートとは奏者と聴衆が一緒に創り上げるもの|プロコフィエフ ピアノソナタ第6番

正直、この客層でプロコフィエフの6番というのはどうなのだろうと一抹心配したのですが・・・

全く杞憂でした。

豊洲では、「プロコの6番」を弾く(弾いた)人も沢山いたので、奏者と聴衆とのコミュニケーションが密で一体となって緊張あるドラマを作り上げている感じを持って私は聴いたのですが・・・

みなとみらいではステージの上でのホロデンコの演奏を(ありがたく)拝聴するという雰囲気でした。

そのためか、そして2000人という大ホールのキャパシティのためか、より演出的な演奏だったと感じました。

どちらがよいという問題ではなく、演奏会というのは奏者と聴衆が一緒になって創り上げるという意味を体感しました。

よい聴衆に恵まれる、よいファンに恵まれるというのは演奏家にとって将来を決定する最重要事項ですね(これは大衆に迎合することなく自身の信じるところに従い、聴衆をリード=教育するという意味を含んでいます)。

それと、個人的にもうひとつ・・・

ショパン=ゴドフスキーを弾いた豊洲ではアクロバティックな手の動きにまどわされることなく《音楽》を聴こうと右寄りの客席で聴いたのですが、みなとみらいではほぼ真ん中にいまして・・・

姿を見ながら改めて思ったのは、

彼のまぁ〜るい手(と身体)がまるでボールのように弾むんですよね。

ピアノと戯れているような姿に、ピアノを弾くための身体能力に恵まれているからこそ可能な演奏なんだなと思いました。

休憩時間には演奏が始まる前と違う空気が流れていたのは、ホロデンコの音楽によって人々が浄化された証だと思いました。

本当にいいものには知識や理解というレベルを超えて人に伝わり、心動かすものがあり、それこそが音楽の偉大さでもあり、ホロデンコの凄さでもあると思うのです。

・・・CD販売コーナーにもたくさんの人が集まっていました。

楽譜に描いてある音楽|ショパン ピアノソナタ第3番

後半はショパンのピアノソナタ第3番。

ショパンコンクールはもちろん、国内外のコンクールやコンサートで聴く機会の多い作品ですが、ホロデンコは何となく耳に残っているこの曲の印象を一掃してくれました。

(ホントは)こういう曲なんだよ。
だって楽譜にそう描いてあるじゃないか。

と彼自身が考えているかどうかはわかりませんが、私にとっては魅力再発見の連続でした。

とにかくひとつひとつの音の意味が明確で、それでいてスケールが大きく、自然な流れで聴く人の心を惹きつけて離さない・・・

物凄いパッションを作品から感じているのに、決してはめをはずさず、細部までコントロールしながら、しかし、冒険もユーモアも遊びもある・・・

そして、何よりピアノが打楽器ではなくとてもリリカルな、歌う楽器であることを教えてくれます。

アンコール1曲目はショパン=ゴドフスキのエチュードOP.10-2。

弾き終わったら会場は

ふ〜・・・

というか、

ほ〜・・・

というか、言葉にならないため息に包まれました。

鳴り止まない拍手に応えて次に弾いたのはショパン=ゴドフスキの左手で弾く《革命》。

弾き終わるや否や、大きくどよめいたんですけれど・・・

う~ん、でも彼がこの作品を弾くにあたってこだわっているのはそこじゃないんだけどな~とちょっぴり思いました。

ともかく、ホロデンコの2つの違うリサイタルを聴くことができて大満足な6月です。。。

データ|みなとみらいアフタヌーンコンサート2019前期「新世代のスーパー・ピアニスト」ヴァディム・ホロデンコ ピアノ・リサイタル

みなとみらいアフタヌーンコンサート2019前期
「新世代のスーパー・ピアニスト」
ヴァディム・ホロデンコ ピアノ・リサイタル

☆プログラム☆

  • ベートーヴェン
    ピアノ・ソナタ第14番「月光」嬰ハ短調 op.27-2
  • プロコフィエフ
    ピアノ・ソナタ第6番「戦争ソナタ」イ長調 op.82
  • ショパン
    ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 op.58

☆アンコール☆

  • ショパン=ゴドフスキー
    練習曲よりOp.10-2、12

【日時】2019年6月13日(木)13時半開演
【会場】横浜みなとみらいホール 大ホール
【ピアノ】FAZIOLI F308

6/11豊洲でのリサイタルはこちらへ。

ヴァディム・ホロデンコ ピアノリサイタル2019|音楽家の使命と存在意義
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