ピアノの音が鳴る仕組みを理解すればもっと上手くなる

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ピアノは鍵盤を押さえれば簡単に音が鳴ります。
こんなに簡単に音が鳴る楽器は打楽器くらいでしょうか。

音が鳴るのが大変な楽器の筆頭はヴァイオリンでしょう。楽器をはじめて持った人の音は「ノコギリ」なんて言われたりしますよね。

それに比べると、ピアノはありがたいことに最初からピアノの音が鳴ります。
PCのキーボードよりも重くて深いけれど、手軽さという点では同じくらい簡単です。

でも、その簡単さが逆に難しさを生んでいて、

歌えない、
速く弾けない、
pからfのディナーミクの幅が狭い・・・

などの問題でつまずきます。

どうしたらいいのかと言ったら、

ピアノの音が鳴る仕組みをしっかり理解してタッチの練習をしなければなりません。

今さらですが、ピアノの音が鳴る仕組みをおさらいしましょう。


この記事を書いた人
伊奈葉子 / Yoko Ina Piano Teacher

自分の手で演奏できるのが何よりの喜びです。ピアノ・音楽、自然とアートとお茶時間をこよなく愛しています。詳しいプロフィールはこちら


ピアノの音は鍵盤の底に指が着く前に鳴ります

ピアノは鍵盤を押し下げると音が鳴ることは誰でも知っていますね。

では、質問です。

音が鳴るタイミングはいつでしょうか?

答えは、

鍵盤が底に着く約1mm上の辺りです。

鍵盤が底に着いた時の音が鳴るのではなく、

鍵盤が下がることによって
ダンパーが上がって弦から離れ、
ハンマーが跳ね上がって弦を叩くことによって音が鳴ります。

ハンマーが跳ね上がるタイミングは鍵盤の底から約1mm上なのです。

ピアノの音が鳴る仕組みを詳しくおさらいしましょう。

  1. 鍵盤を指で押し下げると・・・
  2. ダンパーが上がって弦が振動できる状態になる
  3. (シーソーの原理で)ハンマーが上がり始める
  4. ハンマーが鍵盤のコントロールをはずれて跳ね上がって弦を叩く
  5. 指が鍵盤に到達する(その間音は減衰しつつ鳴り続ける)
  6. 鍵盤は指を離せば自然に上がるようになっているので、音を伸ばすためには鍵盤が上がってこないように必要最小限のエネルギーで押さえる。
  7. 指を鍵盤から離し、鍵盤が元の位置に上がるとダンパーが下がって弦の振動が止まる=音が鳴り止む。

こうなります。

ピアノの音が生まれる瞬間というのは、

ハンマーが鍵盤のコントロールをはずれて跳ね上がって弦を叩く

時で、いわゆる

エスケープメントレベル

と呼ばれます。

エスケープメントレベルは、グランドピアノの鍵盤をゆっくり押し下げると、カクンとした手応えを感じるところです。

そのカクンとした手応えの瞬間にハンマーは鍵盤のコントロールをはずれて跳ね上がり、弦を叩きます。

エスケープメントレベルを過ぎて鍵盤の底に到達するまで約1mmありますが、これはいわば〈あそび〉、〈クッション〉〈余裕〉です。

この1mmのおかげで指の衝撃は和ぎ、素早く次の動きへと移ることができて速いパッセージを弾くことができます。

つまり・・・

鍵盤の底に指が着いた時には音が鳴っているのです。

だから・・・

ピアノで様々な響きを生み出すとか、
繊細なppからスケールの大きなffまで奏でるためには

〈エスケープメントレベル〉の瞬間が命なのです。

ピアノの音を奏でるために大切な4つのこと

ピアノの音が鳴る仕組みから、ピアノの音を奏でるために大切なことを整理しましょう。

  1. ピアノの音が鳴るのは鍵盤の底から約1mm上の〈エスケープメントレベル〉。
    ⇒鍵盤の底に指が着く時ではない。

  2. 指が〈エスケープメントレベル〉を通過する時にハンマーは鍵盤のコントロールを離れて跳ね上がり弦を叩いて音が鳴る。
    ⇒ハンマーが鍵盤のコントロールを離れたら音を生み出すためにできることは終わっている。

  3. 鍵盤は指を離せば上がってくる仕組みになっているので、音を伸ばすためには必要最小限のエネルギーで鍵盤を押さえればいい。
    ⇒鍵盤を押しつける必要はない。

  4. 次の音へ移るためには鍵盤が上がってくるエネルギーを利用する。
    ⇒指だけで頑張らなくていい。

この4つを実際に体現すれば、

  • ppからffの幅広いダイナミックレンジ
  • 歌う豊かな響き
  • 速いパッセージを軽やかに弾く

などの問題に根本からアプローチできるので、演奏は格段によくなります。

ピアノの音は〈エスケープメントレベル〉で生まれる

大切なので、何度も繰り返しますが、ピアノの音を生み出すために最も大切なのは、音が鳴る瞬間、すなわち、弦がハンマーを叩くのを決める瞬間、

エスケープメント・レベル

です。

ここを指が通過する時がピアノの音が生まれる瞬間です。

このことは、多くの人が理屈として知っていますが、指を含めた身体で体現できるかというと・・・難しいのが現実です。

ピアノを弾くことで何か悩んでいるとしたら、まずここからアプローチしなければなりません。というか、

〈エスケープメントレベル〉を捉え、鍵盤が上がってくるエネルギーをコントロールするタッチを身につけるにはトレーニングが必要です。

しかも、

簡単なトレーニングをやりさえすれば誰でも根本的に演奏が改善されます。

ピアノの音を”奏でる”のは難しい

試しに、ひとつの音を鳴らす時に、
鍵盤の動きとダンパーとハンマーの動きを感じてみてください。

いつハンマーが指のコントロールを離れて跳ね上がり、音が鳴るのかわかりますか?

わかる人は、きっと「弾けない」とか「練習すると手が痛くなる」などの悩みはないはずです。

わかる人は、指が鍵盤の底に着く時には音が鳴り終わっているから、鍵盤の底に指を押し付ける必要はないということが体得できているので、指を鍵盤押し付けたりすることは絶対にありません。

やってみればわかりますが、

鍵盤の1cmの動きと
それに連動したダンパーとハンマーの動きを
リアルに感じるのはとても難しいです。

ただ単に鍵盤を押しただけで鳴った音と、〈エスケープメントレベル〉を捉えてコントロールされたタッチで奏でた音は、聴く人が聴けばわかります。

本当に上手い人は、まずただ一音弾いただけでも違いますよね。

それは、

速く指が動くとか
和音が沢山ある曲を弾けるとか
大きな音が鳴るとか・・・

そういうこと以前に、ただ一音を奏でる〈タッチ〉が違うのです。

たった一音の違いからすべては始まる

ラファウ・ブレハッチが2005年ショパン国際ピアノコンクールの一次予選に登場し、ショパン《24プレリュードOp.28》より第7番を弾き始めた時、審査員全員が涙したと言われています。

作曲家について知ることも、
作品をアナリーゼして研究することも大切です。

それを演奏に活かすためには、ひとつの音を豊かに響かせ、コントロールすることから始まります。

え~!!そんなことしないといけないの~?

と思うかもしれませんが、弦楽器・管楽器・声楽の人たちは音(声)を出すための根本的なトレーニングをしています。

一番わかりやすい歌を考えてみてください。
声は誰でも出て、歌は誰でも歌えますが、リートやオペラアリアを歌うためには発声練習から始めます。いや、発声の前に呼吸から始まります。

ピアノも誰でも簡単に音を鳴らすことができますが、本当に上手くなりたいならタッチの練習が必要なのです。

歌えないのも、
速く弾けないのも、
音が弱いのも・・・

すべてはタッチの問題から。

でも、その面倒を乗り越えて、たった一音のタッチを洗練させれば、必ず上達するのです。

もう一度おさらい|ピアノの音を奏でるために大切なこと

ピアノの音を奏でるために大切なことをもう一度おさらいしましょう。

  1. ピアノの音が鳴るのは鍵盤の底から約1mm上の〈エスケープメントレベル〉。
    ⇒鍵盤の底に指が着く時ではない。

  2. 指が〈エスケープメントレベル〉を通過する時にハンマーは鍵盤のコントロールを離れて跳ね上がり弦を叩いて音が鳴る。
    ⇒ハンマーが鍵盤のコントロールを離れたら音を生み出すためにできることは終わっている。

  3. 鍵盤は指を離せば上がってくる仕組みになっているので、音を伸ばすためには必要最小限のエネルギーで鍵盤を押さえればいい。
    ⇒鍵盤を押しつける必要はない。

  4. 次の音へ移るためには鍵盤が上がってくるエネルギーを利用する。
    ⇒指だけで頑張らなくていい。

この4つを実際に体現できれば、

  • 歌えない
  • 速い動きが苦手
  • 速いパッセージで手や腕が痛くなる
  • 和音やオクターブが硬くて汚い
  • fが鳴らない、汚いetc

などの悩みは根本から解決します。

そのためのトレーニングをやりさえすれば誰でも上達します。

⇒ ピアノ・ベーシック・トレーニング&レッスンはこちら

ピアノ・ベーシック・トレーニング&レッスン
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伊奈葉子 / Yoko Ina Piano Teacher

自分の手で演奏できるのが何よりの喜びです。フォーカル・ジストニア他で2度の挫折を経て音楽とピアノはさらにかけがえのない素晴らしい存在になりました。ピアノ・音楽、自然とアートとお茶時間をこよなく愛しています。詳しいプロフィールはこちら