英国の夢 ラファエル前派展

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Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の英国の夢 ラファエル前派展を観てきました。

リバプール国立美術館所蔵品による絵画展ですが、これは「ウォーカー・アート・ギャラリー」、「レディ・リーヴァ・アートギャラリー」、「サドリーハウス」3つのギャラリーの総称です。

展示の最後のコーナーでこの3つのギャラリーの様子をビデオで見ることができ、その充実した様子をうかがうことができました。


この記事を書いた人
伊奈葉子 / Yoko Ina

ピアノと音楽、自然とお茶時間をこよなく愛する伊奈葉子です。慶應義塾大学文学部卒業。詳しいプロフィールはこちら♪


素朴へ立ち返る~ラファエル前派

ラファエル前派とは、19世紀中頃のイギリスで生まれた芸術集団です。
ラファエルを規範としたアカデミックな形式美に反発し、それ以前の絵画の「素朴さ」へ立ち返ろうとしました。

そこには、同時代の美術評論家ジョン・ラスキンの「自然をありのままに再現すべき」という思想の影響があります。

19世紀イギリスと言えば、産業革命により大英帝国絶頂期、豊かになった中産階級が自宅に絵を飾るようになり、美術界は新しい風を求めていました。

そんな中で生まれた作品たち、今回の展示では4章構成で紹介されました。

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Ⅰ ヴィクトリア朝のロマン主義者たち

ラファエル前派は、若いアカデミーの学生が中心となったこともあり、本質的に、理想を追求したロマン主義です。

限りなく美しい、く明るい色彩に魅了されます。

特に私が印象深いと思ったのは、ジョン・エヴァレット・ミレイ『森の中のロザリンド』、『巣』、『春(林檎の花咲く頃)』。特に『春(林檎の花咲く頃)』は、美しくも妖しく、不気味でさえあります。

また、アーサー・ヒューズ『聖杯を探すガラハッド卿』、ダニエル・マクリース『祈りの後のマデライン』も見ごたえがありました。

Ⅱ 古代世界を描いた画家たち

大英帝国こそ古代ローマ帝国の後継者である。

そう思っていたヴィクトリア朝の人々は、古代ギリシャ・ローマの文化に詳しく、神話や古典的主題を題材にした作品も多く描かれました。

歴史的忠実さより芸術性に重きが置かれがそれらの作品は、ただただ美しく、その世界の醸し出す空気に心地よく浸ることができます。

門外不出の傑作として、今回の展示の目玉のひとつでもあるフレデリック・レイトン『ペルセウスとアンドロメダ』はさすがでした。

アーサー・ハッカー『ペアジアとフィラモン』、ハーバード・ジェイムズ・ドレイシー『イカロス哀悼』も素晴らしかったです。

個人的にとても気に入ったのは、チャールズ・エドワード・ペルジーニ『シャクヤクの花』、エドワード・ジョン・ポインター『愛の神殿のプシュケ』、エドワード・ジョン・ポインター『テラスにて』。
この3枚が並んだ壁の、華やかながらも上品で香ってくるような雰囲気がとても印象に残りました。

Ⅲ 戸外の情景

産業革命により、都市の発達が著しい中、都会に住む人々には田舎への憧れが生まれました。
そして、ラファエル前派の特徴である「自然に忠実に」という作品を描くことで名声を博したのがウィリアム・ヘンリー・ハントです。

『卵のあるツグミの巣とプリムラの籠』は、まるで写真のような見事な作品でした。

また、ジェイムズ・ハミルトン・ヘイ『流れ星』は、とてもシンプルに星の流れる夜空をを表現していて印象に残りました。

Ⅳ 19世紀後半の象徴主義者たち

このコーナーには、今回のもうひとつの目玉であるエドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ『スポンサ・デ・リバノ(レバノンの花嫁』があります。
そのジョーンズはこんなことを言っています。

絵画は美しくロマンティックな夢であり、これまで存在したこともなく、また将来も存在することのない何かであり、かつて見たどのような光よりも優れた光の中にあり、誰も限定したり記憶したりすることができない、望むことだけができる世界の中にある。

今回の展示が『英国の夢』とされたところ、そのものだと思いました。

4章構成のフィナーレらしく華やかなこのコーナーでは、トーマス・ミリー・ダウ『エヴァ/炎の中でシンバルを持つ天使/竪琴を持つ天使(三連画)』と、ジョン・ロダム・スペンサー・スタナップ『楽園追放』の巨大な絵が並んだ壁が度肝を抜かれます。

このような旧約聖書 創世記をモティーフにした絵も、ラファエル前派では、とても上品で慎ましやかに描かれているのがとても興味深かったです。

これが、イタリアルネサンスだと、エヴァがリンゴを食べるシーンなんか、

人間は罪深い、どーしよーもない存在なのよー。
神様は、悔い改めれば七度の七十倍だって赦してくれるんでしょー・・・

的な雰囲気が漂っていたりしますが、ラファエル前派では、何か厳粛ささえ感じられます。

ところで、この『楽園追放』は、額が絵に負けず劣らず立派で、ソファに座ってしばし見入ってしまいました。

紳士の国の絵は上品

上品といえば、人物画もそうです。

イタリアやフランス、また栄華を極めたハプスブルグなんかもそうですけど、彼らの肖像画は、虚栄心と自己顕示欲を満足させたい欲求と、それを満足させようとする画家の思惑があふれていて、時に「勝手にやってて~・・・」と感じることがあります。

けれど、この日観た人物画は、人そのものを描くというより、その人を描くことで、感情や心象風景を表現しようとしているようでした。

人物画を、こんなに気持ちよく鑑賞して、満足したのは初めてかもしれません。

限りなく美しく、上品な、夢あふれるそれらの作品は、さすがは、紳士淑女の国で生まれたものだと感動しました。

英国の夢 ラファエル前派展
Bunkamura ザ・ミュージアム

なお、文中の解説は公式サイト学芸員による展覧会紹介を参考にしています。

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ピアノと音楽、自然とアートとお茶時間をこよなく愛する伊奈葉子です。慶應義塾大学文学部卒業。詳しいプロフィールはこちら