季節は、移ろうからこそ美しく、
そこに自然の摂理に見ることができます。
季節の移り変わりを表す二十四節気をご紹介します。
二十四節気は太陽と地球の関係から1年を24分割
そもそも、なぜ季節が移り変わるのかというと、地球と太陽の関係から生まれています。
すなわち、
地球と太陽が近い夏は日照時間が長く気温も高い。
地球と太陽が遠い冬は日照時間が短く気温も低い。
というのは、体感している通りです。
・・・で、太陽が地球の上を回る道を黄道といいます。
二十四節気は、この黄道を二十四分割しています。
どう分割しているかというと、
黄道を夏至と冬至の「二至」で二等分、
春分と秋分の「二分」で四等分した「二至二分」。
二至二分をそれぞれ二分割して立春、立夏、立秋、立冬の「四立」を入れた「八節」。
八節をさらに約15日ずつに3等分したのが「二十四節気」です。
二十四節気をさらに約5日ずつに3等分し、時候を表したのが「七十二候」です。
(二十四節気それぞれのページで紹介しています)
二十四節気と季節の習わしには、長い間をかけて培われてきた意味と知恵があります。
季節の移ろいを感じる細やかな感性は、物事の流れや機微をキャッチし、チャンスをものにするために欠かせないもの。
季節を感じ、旬を味わうことは日々の豊かさと心身の健康をもたらし、そして、しなやかに生きる知恵を育むことでもあります。
春~生命が誕生する季節
春には、万物が発る(はる)、木の芽が張る(はる)の意味があります。
生命が芽生え、万物が活動を始める季節です。
立春(りっしゅん)~ 春の気始めて立つ 2月4日頃
春の気たつを以て也(暦便覧)
立春は二十四節気の最初の節。
この日から立夏の前日までが春です。
雨水 (うすい) 氷雪解け雨水温む 2月18日頃
陽気地上に発し、雪氷とけて雨水となれば也(暦便覧)
空から降るものが雪から雨に替わる頃。
降り積もった雪や張り詰めた氷が溶けはじめるとされます。
啓蟄 (けいちつ) 冬篭りの虫声を啓く 3月5日頃
陽気地中に動き、ちぢまる虫、穴をひらき出れば也(暦便覧)
啓蟄啓戸とは、「蟄虫(すごもりむし)戸を啓(ひら)く」の日のこと。
冬眠をしていた虫が穴から出てくる頃という意味。
この虫とは、昆虫だけでなく蛇や蛙など小動物も含まれます。
春分 (しゅんぶん) 春の最中夜昼平分 3月20日頃
日天の中を行て昼夜等分の時也(暦便覧)
太陽が真東から昇り真西に沈み、昼と夜がほぼ同じ長さになる日です。
春分の日を「春の彼岸の中日」として前後3日ずつ、計7日間が春の彼岸です。
この日から徐々に昼が長くなり、南から桜の便りも聞かれるようになります。
清明 (せいめい) 草木清明風光明媚 4月4日頃
万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれる也(暦便覧)
清浄明潔とは清らかで明るいという意味で、略して清明とされました。
芽を出したばかりの頃には何の草かわからなかった植物も、名前がわかるほどに成長する頃です。
穀雨 (こくう) 百穀春雨に潤う 4月20日頃
春雨降りて百穀を生化すれば也(暦便覧)
穀雨とは、百穀を潤す雨。
百穀とは、米、麦、豆、粟(あわ)、稗(ひえ)、黍(きび)など、人類が主食としてきた数多くの穀物です。
作業が進む田畑を優しく包むように、静かに降る春の雨は、万物にとって恵みの雨です。
夏~成長・活動の季節
夏は、熱(ねつ)、暑(あつ)の意味。
万物が活発に活動・成長し、エネルギーが満ち溢れる季節です。
立夏 (りっか) 夏の気始めて立つ 5月5日頃
夏の立つが故也(暦便覧)
夏立つ日。
暦の上ではこの日から立秋の前日までが夏です。
新緑の香りと爽やかな風、まばゆい陽射しに全てが活発に成長を始めます。
小満 (しょうまん) 陽気盛万物稍満足す 5月21日頃
万物盈満(えいまん)すれば草木枝葉繁る(暦便覧)
「麦の穂が実り少し満ちてきた・・・」というのが本来の意味。
やがて「万物が次第に生長して生い茂る」となりました。
芒種 (ぼうしゅ) 麦を納め稲を植う 6月5日頃
芒(のぎ)ある穀類、稼種する時也(暦便覧)
芒(のぎ)は、イネ科の植物特有の小さな棘か細い毛のようなものを、芒種とは穀物の種でのことです。
稲などの穀物の種をまく時期というのが本来の意味でした。
夏至 (げし) 夏の最中日北上の極 6月21日頃
陽熱至極しまた、日の長きのいたりなるを以て也(暦便覧)
夏至は、太陽が最も北に寄り、高い位置に来る日、昼間の時間が一年で一番長くなります。
とは言え、日本の夏至は梅雨の最中なので太陽を実感できる年は少ないです。
小暑 (しょうしょ) やや暑熱を催す 7月7日頃
大暑来れる前なれば也(暦便覧)
大暑、つまり本格的な暑さがやって来る前ということです。
この日から「暑中」、暑中見舞いの季節です。
大暑 (たいしょ) 蒸熱酷暑を感ず 7月22日頃
暑気いたりつまりたるゆえんなれば也(暦便覧)
暑さが行き着くところまで達し、最も暑い頃という意味。
梅雨明けしてギラギラと照り付ける太陽と響き渡る蝉の声に夏のクライマックスを感じます。
秋~実りと収穫の季節
秋は、稲穂が実る「黄熱(あかり)」、樹々の葉が紅く(あかく)染まるの意味。
実りと収穫を享受する季節です。
立秋 (りっしゅう) 秋の気始めて立つ 8月7日頃
初めて秋の気立つがゆへなれば也(暦便覧)
この日から秋の気が立つということであって、涼しくなるという意味ではありません。
一年で最も暑い頃ですが、朝夕の風は次第に熱気がおさまるのを感じるようになります。
この日から、残暑見舞いとなります。
処暑 (しょしょ) 暑気退かんとする 8月23日頃
陽気とどまりて、初めて退きやまんとすれば也(暦便覧)
「処」は落ち着くという意味を持っていて、処暑は暑さが落ち着く頃と言う意味。
昼間は暑くても、朝夕の風に涼を感じるようになってきます。
白露 (はくろ) 気界冷露白し 9月8日頃
陰気ようやく重なりて露にごりて白色となれば也(暦便覧)
陰気とは、陰陽五行思想の陰を表し、春夏は陽、秋冬は陰とされています。
陽気に満ちて暑い空気も、陰気が増えて秋らしくなる頃。
秋分 (しゅうぶん) 秋の最中昼夜平分 9月23日頃
陰陽の中分となれば也(暦便覧)
太陽が真東からのぼって真西に沈み、昼と夜の長さが同じになる日。
この日を境に夜の方が長くなり、すなわち、秋の夜長です。
寒露 (かんろ) 気寒く露草重し 10月8日頃
陰寒の気に合って、露むすび凝らんとすれば也(暦便覧)
白露の頃には涼しく感じられた露もこの時期には寒々と感じられるという意味。
秋晴れが続く、爽やかな頃です。
霜降 (そうこう) 霜結んで厳霜白し 10月23日頃
つゆが陰気に結ばれて、霜となりて降るゆへ也(暦便覧)
気温はさらに低くなり、朝露が霜に変わる頃という意味。
日の短さを感じ、もの悲しくなる季節です。
冬~生命は眠り充電する季節
冬は、冷ゆ(ひゆ)、振るう(ふるう)、震う(ふるう)から来ています。
動物は冬ごもり、草木も眠り、再びめぐる春を待ちます。
立冬 (りっとう) 冬の気始めて立つ 11月7日頃
冬の気立ち初めていよいよ冷ゆれば也(暦便覧)
この日から立春の前日までが暦の上で冬。
陽射しが弱々しくなり、日暮れも早く、時折降る時雨に冬を感じる頃です。
小雪 (しょうせつ) 寒く少し雪降る 11月22日頃
冷ゆるが故に雨も雪となりてくだるがゆへ也(暦便覧)
空気がさらに冷えて雨は、雪となって降ってくる頃。
北風に木の葉が舞う季節がやってきます。
大雪 (たいせつ) 天地閉塞雪降る 12月7日頃
雪いよいよ降り重ねる折からなれば也(暦便覧)
北国では本格的に雪が降り積もるようになります。
熊など動物は冬眠を始める頃でもあります。
冬至 (とうじ) 冬の最中日南下の極 12月21日頃
日南の限りを行て日の短きの至りなれば也(暦便覧)
一年中で最も太陽が遠く、低く、昼が短くなる日。
この日を境に太陽が戻ってくることから、一陽来復として運が快復する日とされます。
小寒 (しょうかん) 寒気稍強し 1月6日頃
冬至より一陽起るが故に陰気に逆らう故益々冷る也(暦便覧)
冬至を過ぎ太陽が戻ってくるに従い、陽の気が起こる、
それに陰の気が対抗してますます寒くなると考えられました。
大寒 (だいかん) 厳寒を感ず 1月20日頃
冷ゆることの至りて甚だしきときなれば也(暦便覧)
一年で最も寒さの厳しい頃 。
寒さは底をつき、次は立春です。
参考
暦便覧
文中で引用している「暦便覧」は、太玄斎が校訂し天明七年(1787)に出版された暦の解説書です(寛政十年(1798)に再版)。二十四節気の特徴を表すフレーズとして今も広く親しまれています。
暦便覧は、国立国会図書館デジタルコレクションで公開されています。