美術館は生きて成長していく~『はじまり、美の饗宴展』

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新国立美術館で開催中の『はじまり、美の饗宴展すばらしき大原美術館コレクション』を観ました。

岡山県倉敷市にある大原美術館は、大実業家大原孫三郎の支援と理解を得て、画家児島虎次郎がヨーロッパで収集した作品により1930年、日本で初めての西洋美術を紹介する美術館として誕生しました。

大原美術館のコレクションは、古代エジプト・オリエント、東洋の古代美術、西洋近代美術、日本近代洋画、民芸運動ゆかりの作家たちの作品、戦中戦後の美術から、現代まで、多岐にわたっているのが特徴です。

今回の展示は7書構成でその珠玉の作品が紹介されました。

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この記事を書いた人
伊奈葉子 / Yoko Ina

ピアノと音楽、自然とお茶時間をこよなく愛する伊奈葉子です。慶應義塾大学文学部卒業。詳しいプロフィールはこちら♪


1章  古代への憧憬

エジプト、西アジア、中国の古美術が並ぶ様子は、ずっしりと歴史の重みを感じますね。

イラン『藍釉色絵金彩宝珠文細口瓶』の、群青に彩られた瓶がとても美しい。
同じくイラン『刻線花文碗』、トルコ『白地多彩人物草花文皿』も印象に残りました。

現在のカイロ市南部にあたるという『エジプト フスタート出土陶片』が並ぶ様子に当時の華やかな文化を感じ、古代文化へ想いを馳せました。

2章  西洋の近代美術

ここは、何といっても、エル・グレコ『受胎告知』が圧巻です。

天使が闇を切り裂いて鳩とともに出現するその絵は、厳粛にして神秘的です。
ダ・ヴィンチの『受胎告知』は色彩の美しさに目を奪われますが、エル・グレコはドラマティックなインパクトが突き刺さります。

まさに神の子キリストの誕生という歴史が動く瞬間を表そうとしているのが伝わってきます。

はじめてこの絵を、倉敷の大原美術館で観たのは20歳くらいで、私にとって受胎告知はただの物語でしかありませんでした。

幼い頃、マリア幼稚園に通い、お祈りの時間でキリスト教を身近に感じ、その後もクラシック音楽や西洋文化との関わりでキリスト教に親しんできたものの、30歳くらいの時に聖書を読む前と後では、私の中のキリスト教は大きく違います。

隠れクリスチャンと公言する今では、このエル・グレコの『受胎告知』のインパクトは、とても感銘を受けますね。。。

そのほか、ピサロ『りんご狩り』、ドガ『赤い衣装をつけた三人の踊り子』、そして、有名なモネ『睡蓮』が美しかったです。

面白かったのは、ジョルジョ・デ・キリコ『ヘクトールとアンドロマケーの別れ』。
まるでサイボーグか人形のように描かれた男女のシーンが意味深でした。。。

3章  日本の近代洋画

日本の洋画も大原美術館の中核的コレクションです。

大原美術館誕生になくてはならない児島虎次郎自身の作品『和服を着たベルギーの少女』が目を引きます。

・・・個人的には、実は日本の近代洋画ってよくわからないのです、実は・・・
明治維新以後、追いつけ追い越せと西洋文化を形だけ真似したのは、芸術の世界も例外ではないのですが、それは果たして何を表現していたのか・・・

岡本太郎が、パリ留学時代に、周囲の皆と同じようには描けないと嘆いた気持ちってこれかな~という気が少しだけします。

4章  民芸運動ゆかりの作家たち

日本人の作品としては、こちらの方が私は感銘を受けます。

壁一面に並んだ棟方志方の作品は、生き生きしたエネルギーに満ちています。
これぞ、内側から生まれる芸術だというしっくり感があります。

バーナード・リーチの陶芸も、描かれた魚や鹿に生き生きした躍動感を感じました。

やはり、芸術は生命を感じたい・・・

5章  戦中期の美術

1930年に開館した大原美術館はすぐに戦中期の困難な時代を生き抜くことを余儀なくされます。

そんな時代にも、同時代の芸術家を支援し続けた大原の姿勢を、昨今の政治家・財界人に見習って欲しいものです。

6章  戦後の美術

この章の作品を眺めて感じたのは、岡本太郎のこの言葉でした。

今日の芸術は、 うまくあってはいけない。
きれいであってはならない。
ここちよくあってはならない。

岡本太郎をこよなく敬愛する私ですが・・・、

とは言え、やはり、

美しい絵画を観たい。
鮮やかな色彩を観たい。
心地よい絵と過ごしたい。

と思うのでした。。。

7章  21世紀へ

常に同時代の芸術を支援してきた大原美術館は、今、生まれる作品もコレクションに加え続けています。

東島毅『光のすきま』は、壁一面に広がる緑の色鮮やかさが印象的でした。

津上みゆき『View – “Cycle” 26 Feb.–10 Apr., 05《Places》』は美しいピンク。

谷保玲奈『繰り返される呼吸』は、左側が池を泳ぐ金魚で右へ視線を動かすと、何か原始的な生物が複雑に絡むように描かれ、生物の進化、そして普遍的な生命の連なりを感じます。
オレンジ基調の不思議な絵でした。

美術館は生きて成長してゆくもの

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展示の最後は、大原總一郎氏のこの言葉で締めくくられていました。

大原美術館は、開館当時から、価値を認められた美術品をコレクションに加え続けると同時に、同じ時代を生きる芸術家たちを支援し続けてきました。

そもそも、ヨーロッパ文化は「パトロネージュ」のもと、発展してきたものです。
大原美術館は、ただ作品を集めるだけでなく、その精神を貫いているからこそ、素晴らしい美術館として成長を続けているのだと感じました。

こうして作品を観ていたら、大原美術館の建築と倉敷の美しい街並みを訪れてみたくなりました。

はじまり、美の饗宴展~すばらしき大原美術館コレクション

新国立美術館

大原美術館

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ピアノと音楽、自然とアートとお茶時間をこよなく愛する伊奈葉子です。慶應義塾大学文学部卒業。詳しいプロフィールはこちら