ティツィアーノとヴェネツィア派展|祝福のシャワーでリッチになろう

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上野の東京都美術館で開催中のティツィアーノとヴェネツィア派展を観てきました。

ティツィアーノはいいですね~。心底幸せになります。
ヴェネツィア・ルネサンスはリッチです。祝福のシャワーを浴びて人生のステージが上がるような充実感があります。


この記事を書いた人
Ina / 伊奈葉子 ヴィジョン・コンサルタント

食べるように本を読むInaです。
ネットで得られるのは情報、本で得るのは知識。食事が消化吸収ののち栄養になるように熟読は教養を深めます。ピアノと音楽と自然、美しいものと美味しいものと紅茶が大好きです。慶應義塾大学文学部卒業。詳しいプロフィールはこちら♪


ティツィアーノとヴェネツィア派展とは

水の都として知られるヴェネツィアは、15~16世紀に海洋貿易によって栄えた都市です。

国際都市として発展し、様々な文化交流によりヴェネツィア・ルネッサンスとして一時代を築きました。

ヴェネツィア派の特徴

ヴェネツィア派の特徴は、何と言っても明るい色彩と自由奔放な筆致、そして、柔らかい光による独特の効果にあります。

それは、港湾都市という地理的条件により、強い陽射しが降り注ぎ、湿度の高い環境であるためカンヴァスに油彩で描く技法が好まれたことが挙げられます。

この展覧会は、ティツィアーノを中心としたヴェネツィア派の作品68点によって、ヴェネツィア派とティツィアーノの魅力を楽しめるものでした。

ティツィアーノとは

ティツィアーノは本名をティツィアーノ・ヴェチェッリオ( Tiziano Vecellio)と言います。

生まれたのは1488年か1490年頃とされていますが定かではないようです。約70年間描き続けて1576年8月27日に亡くなりました。

少年期に兄とともにヴェネツィアにいた親戚にあずけられ、ジョヴァンニ・ベッリーニの工房で修行を積みます。

やがて、自由な筆遣いと豊かな色彩により独自の様式を築きあげた彼は、同時代の人々からダンテ『神曲』の言葉を引いて『星々を従える太陽』と呼ばれていたそうです。相当なやり手だったようですよ。。。

 宗教画や貴族の神話画、肖像画などを数多く手掛けた彼は、後のルーベンスやベラスケス、ルノワールなどにも影響を与え、今なお人々を魅了し続けています。

「ティツィアーノとヴェネツィア派展」の面白さ

さて、展覧会の内容に入りましょう。

「ティツィアーノとヴェネツィア派展」の、私Inaが興味深いと思ったのはふたつあります。

ティツィアーノを中心にヴェネツィア派を概観できる

今回の展示の興味深いところは、ティツィアーノを中心にヴェネツィア・ルネサンスを時系列的に概観できるところです。

この展覧会構成はまさにそのものズバリです。

  1. 1460-1515 ヴェネツィア、もうひとつのルネサンス
  2. 1515-1550 ティツィアーノの時代
  3. 1550-1581 ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼ ―巨匠たちの競合

ティツィアーノ以前から、ティツィアーノ全盛期、そして、ティツィアーノ以後への流れと、彼の周囲の画家たちの作品はティツィアーノが何者で、ヴェネツィア・ルネサンスが何たるかっを体感させてくれるものでした。

展覧会構成が見事な「ティツィアーノとヴェネツィア派展」

もうひとつ面白かったのが、展示の構成です。

会場に入り、挨拶や解説が終わるとまず飛び込んでくるのが、聖母子、聖母子、聖母子・・・その数なんと9枚!

緩やかな弧を描いた広い壁にかかったさまざまな「聖母子」たちは、21世紀の東京から15~16世紀ヴェネツィア・ルネサンスへと誘ってくれます。

また、II章では、壁一面に7枚もの男の肖像が並び、神を賛美したルネサンスの人々の一方で、富と繁栄をもたらしたのは男たちであることを示し、いつ、どの時代でも男は「俺様!」であり、「ナンバーワン!」でいたいのね~と笑わせてくれます。

また、ティツィアーノの同時代の画家たちの絵を並べることで引き立て役になっていたり・・・

この展覧会は1枚1枚の絵もさることながら、構成が非常に面白かったです。

ティツィアーノとヴェネツィア派展のIna的みどころ

展示そのものは、解説読んで「へ~・・・」と納得するより、やはり自分の目で見て感じるのが一番ですよね。

ごちゃごちゃ書くのはもう備忘録なのですが、とても素晴らしかったので書かずにはいられません。完全なる私的、Ina的備忘録ですが、どんな絵があるのか興味ある方、参考になったら嬉しいです。

I 1460-1515 ヴェネツィア、もうひとつのルネサンス

東京都美術館のB1へ降りたフロアで始まるI章。

挨拶やら解説やらを見て過ぎると、緩やか弧を描いた壁に並ぶ9枚の様々な『聖母子』が迎えてくれます。

『聖母子』祭り

『聖母子』とは、言うまでもなく聖母マリアが赤ちゃんであるイエス・キリストを抱っこしている絵です。ルネサンス絵画の最もメジャーなテーマで本当に沢山の絵があります。

今回の展示で私がいいなと思ったのは、2枚。

ティツィアーノが修行したベッリーニの『聖母子』とモンターニャの『聖母子』です。

理由は・・・完全にフィーリングです。好きなものは好き、ただそれだけです。

ジョバンニ・マンスエーティ『博士たちとの議論』

『聖母子』祭りが終わると、大きな絵画が並びます。ひときわ目を引いたのは、ジョバンニ・マンスエーティ『博士たちとの議論』。

少年時代のイエスが律法学者を相手に博学な議論で感服させる聖書の有名なシーン。幾何学的的に正確かつ美しく描かれた壮大な建物が、世界とその秩序を作った創造主のひとり子イエスの聡明さを表しているようでした。さすがルネサンス!

ティツィアーノ『復活のキリスト』

若きティツィアーノの『復活のキリスト』は、粗削りながらも巨匠ぶりを感じされる勢いあふれる絵でした。

マレスカルコ『田園の奏楽』

・・・で、このI章で私が最も好きなのが、マレスカルコ『田園の奏楽』。

田園の奏楽というテーマは16世紀のヴェネツィアでとても好まれたそうです。少し離れて観ると、女性たちのふんわりしたドレスに音楽が聴こえてくるような牧歌的な風景に魅了されました。

II ティツィアーノの時代

エスカレーターで1階へ上がり、II章が始まります。

絶対に観るべきティツィアーノ『フローラ』

迎えてくれるのはパルマ・イル・ヴェッキオの2枚の絵、
『女性の肖像(スキアヴォーナ)』と『ユディト』。

共に赤い豪華な衣装で目を引きます。

次のティツィアーノ『フローラ』は白い衣裳で一見自然体のふつーに見えます・・・が、観ているうちにどんどん輝きを増し、今にも動き出してしゃべり始めるのではないかというような生命感があるのです。

ここは3枚を見渡すととても面白い。

ヴェッキオの絵は、しばらく見ているとなぜか沈んでくるのです、時間とともに朽ちていくような感じさえあります。『フローラ』は絵から飛び出してきそうになる・・・

これが当代一流と、時代を超える超一流の違いかと思いました。

『フローラ』、凄いです。

『聖母子』祭りふたたび

次にはまた『聖母子』たち、ここは壁一面に4枚並んでいます。。

私が印象に残ったのは、ロッコ・マルコリーニと共同制作者『聖カタリナの神秘の結婚、聖ヒエロニムスと大修道院長聖アントニウス』です。ひょっとしたら4枚の中ではマイナーなのかもしれませんが、私はこの絵が好きです。

7人の男たち

ふっとひと息ついて次の壁に並ぶのが、7枚の男の肖像。いや~、ここ迫力ありますよ。

何と言ってもルネサンスの富を作ったのは男ですからね。
何れ劣らぬ自信家「俺こそナンバーワン!」オーラがバチバチしていました。

ティツィアーノ『ダナエ』を観ないなんてあり得ない

そんないつの時代も変わらぬ浮世の様子を見て過ぎると、今回の目玉、ティツィアーノ『ダナエ』です。

これはすごいです!
これ1枚だけでも来た甲斐が有り余るほど。

キューピットと交わって、金貨の混じった黄金の雨を恍惚として眺めるダナエの表情は、至福感というか崇高さというか・・・

これは神に帰依する感覚とそれを描く天与の才と、そして努力がないと描けないと思いました。

この『ダナエ』を見たミケランジェロはこう語ったそうです。

ティツィアーノの色彩も様式も気に入ったが、しかしヴェネツィアでは、最初にデッサンを能く学ぶということをしない。これは残念なことだ。ヴェネツィアの画家たちは勉強のしかたをもっと改善することもできように、その点が惜しまれる。美術史家ヴァザーリ『美術家列伝』より

これ、完全に嫉妬じゃないかと思ったりします。。。

この後、ヴェネツィア派の版画が14枚あります。その精緻さは驚嘆ですよ。。。

III ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼ 巨匠たちの競合

そしてエスカレーターを上がるとIII章です。

ティツィアーノ『マグダラのマリア』

このIII章の最大のみどころは、ティツィアーノ『マグダラのマリア』でしょう。ティツィアーノもっとも後期のマグダラのマリアとの事。

敬虔さよりも女性の美しい官能が描かかれている・・・

とかなんとか解説にありましたが、不思議な雰囲気の絵です。う~ん・・・宗教的エクスタシーとか言ったら怒られるかな・・・でも、そんな感じですね。

パオロ・ヴェロネーゼ『聖家族と聖バルバラ、幼い洗礼者聖ヨハネ』

とても目を引くのは、パオロ・ヴェロネーゼ『聖家族と聖バルバラ、幼い洗礼者聖ヨハネ』。

ヴェロネーゼ円熟期の重要な作例との解説でしたが、そこに描かれた金髪や衣装はまさに金そのものに見えます。解説には、こうありました。

洗練された彩色の技で画面のあらゆる部分に注ぐ光をとらえ輝くような世界を描いた。

ルネサンスのリッチ感全開で締めくくられた展示でした。

まとめ~ルネッサンスはリッチ

ということで、この展覧会をひと言でいうなら、

ルネッサンスはリッチだ!

心の豊かさとモノの豊かさはイコールではないとは言え、無関係ではないです。

富は祝福だな~とコンパクトながらもぎゅっと凝縮された興味深い展示に大満足でした。

番外編:美術館は雨の日に行こう

さて、私が出掛けたのは2月9日、この冬4度目の雪となった寒い日でした。

午前中に入場したらガラガラで観たい放題!

大きな絵は離れて観たいじゃないですか。壁の反対側に立っても間に誰もいない状態で観たい放題でした。大満足です。

美術館は雨か雪の日の午前中に限ります。

では、最後に展覧会情報です。

「ティツィアーノとヴェネツィア派展」展覧会情報

【会期】2017年1月21日(土)~4月2日(日)

【展覧会場】東京都美術館 〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36

【アクセス】JR上野駅「公園口」より徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅「7番出口」より徒歩10分、京成電鉄京成上野駅より徒歩10分

【開館時間】9時30分~17時30分(入場は30分前まで)
*金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)

【休館日】月曜日、3月21日(火)※ただし、3月20日(月・祝)、27日(月)は開室

【公式HP】http://titian2017.jp/

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食べるように本を読むInaです。
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