ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち~富は祝福

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ルネサンス絵画って活き活きしていて色鮮やかです。

観ていると心がリッチになります。

ルネサンス絵画の中心は宗教画です。

観ていると敬虔な気持ちが湧いてきます。

国立新美術館で開催されているアカデミア美術館所蔵ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たちは、まさにマリア祭り!聖母子祭り!

現代のように科学が発達していなかった時代、病気も自然災害も神に祈るしかなかった人々の謙虚さや人智が及ばない域への畏敬の念というものを、絵を通じて感じました。

会期残すところ10日あまり・・・

混雑しているかと思いきや、1階で開催されているダリ展の方に多くの人が流れていたようで、ゆっくりと観ることができました。


この記事を書いた人
Ina / 伊奈葉子

ピアノと音楽、自然とお茶時間をこよなく愛するInaこと伊奈葉子です。慶應義塾大学文学部卒業。詳しいプロフィールはこちら♪


アカデミア美術館とは

この展覧会は、イタリア ヴェネツィアのアカデミア美術館所蔵品による展示です。

アカデミア美術館の歴史は古く、創立は1750年、ヴェネツィアが共和国であった時代の「絵画・彫刻・建築アカデミー」にさかのぼります。

その後ナポレオン軍の侵攻による共和国崩壊から1805年にフランス支配下のイタリア王国にヴェネツィアが併合されるまでの激動を経て、1807年に「王立美術アカデミー」に改名されました。サンタ・マリア・デッラ・カリタ修道院へ移転し、展示のための建物改修後1817年に初めて一般に公開されアカデミア美術館の誕生です。

この展覧会は、日伊国交樹立150周年特別展として開催されました。

アカデミア美術館の所蔵品による本邦初の展示です。

ヴェネツィア・ルネサンスとは

ルネサンス(Renaissance)は「再生」「復活」を意味するフランス語。歴史的には14~15世紀にイタリアで興った古代ギリシア・ローマの学問・知識の復興を目指す文化運動です。

歴史は繰り返すとか、温故知新とか・・・時代というものは新しさを求める一方で、古き佳きものを思い出そうとするスパイラルです。ルネサンスもそんな感じですね。

ルネサンス絵画と言っても、実はルネサンス発祥の地であるフィレンツェと今回来日したヴェネツィアでは作風が違うのですよね。

ひと言でいうなら、フィレンツェは整然とした構図で筆致も着彩も丁寧、一方のヴェネツィアは、大胆で劇的な構図と自由奔放で豊かな色彩表現が特徴です。

ヴェネツィアと言えば、水の都、そして、ヴェネツィアのカーニバル!

ヴェネツィア・ルネサンス絵画の、観る人の感情を揺さぶるような表現はあのヴェネツィアのカーニバルに熱狂する人々の気質に由来しているような気がします。

日本列島でも、北と南、あるいは東京と大阪では人々の気質や文化が違います。同じ国の中でも、地理的条件や気候などによって人の気質は異なり、独自の文化が育つのは世界共通なのですね。

『ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち』~ルネサンス黎明から終焉

『ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち』と題された今回の展示は5章構成でした。

  • 第1章 ルネサンスの黎明―15世紀の画家たち
  • 第2章 黄金時代の幕開け―ティツィアーノとその周辺
  • 第3章 三人の巨匠たち―ティントレット、ヴェロネーゼ、バッサーノ
  • 第5章 ヴェネツィアの肖像画
  • 第4章 ルネサンスの終焉―巨匠たちの後継者

以下、完全に私感、私の印象に残った絵たちを好き放題語ります。

ルネサンスの黎明―15世紀の画家たち

ここは11作品の展示中7作品にマリアが描かれていました。

マリア祭り!

色んなマリアが見られてとても興味深かったです。

中でも、今回のポスターになっているジョヴァンニ・ベッリーニ『聖母子(赤い智天使の聖母)は見事でした。

ベッリーニは詩的な画風で知られ「聖母の画家」とも呼ばれます。穏やかながら感情表現豊かに描かれた聖母子の姿は祝福に満ちていました。

黄金時代の幕開け―ティツィアーノとその周辺

アンドレア・ブレヴィターリ『キリストの降臨』は、馬小屋でのイエス・キリストの誕生を描いた作品です。生まれたばかりのイエスと母マリアと父ヨゼフ、建物の外には侍女たちの姿や、羊飼いたちにメシア誕生を告げる天使の姿など、聖書の有名なシーンを牧歌的に描かれています。作品全体に漂う祝福感が観るものを幸せにしてくれます。

他にも優れた作品が沢山ですが、このコーナーの一番の見どころは今回の展示の目玉でもあるティツィアーノ・ヴェチェッリオ『受胎告知』。

このポスターでも迫力ありますが、実物は410 × 240 cmという巨大な作品です。

サン・サルヴァトーレ聖堂の右側廊の祭壇を飾っている様子が、途中のビデオコーナーで見られました。教会にはこういう絵が似合います。これがカトリック教会の魅力的なところ(プロテスタントはカトリックの華美を批判して始まったので、基本的に質素=地味=ふつーの家っぽい)

絵の前に立つと、空の天使と鳩は天を仰ぎ見るような位置にあり、神がいる天というものを意識せずにはいられません。

この絵のテーマである『受胎告知』とは、まだ結婚前であったマリアのもとに大天使ガブリエルが訪れ受胎を告げる場面です。精霊により身ごもったということで「処女懐胎」と呼ばれているのは、要するにイエスは(男女の関係によって生まれた子ではなく)神の子なんですよということを意味するわけで宗教画の主要テーマです。

そして、ヴェネツィアにとって『受胎告知』は特別な意味がありました。それはヴェネツィアの建国が421年3月25日、すなわち、受胎告知の祭日という言い伝えられているからです。晩年のティツィアーノがこの作品にどれほどの情熱を傾けて描いたか、これは凄い絵です。

三人の巨匠たち―ティントレット、ヴェロネーゼ、バッサーノ

1章でテンション上がり、ティツィアーノ『受胎告知』がメインでクライマックス。あとはアンコールか、デザートか・・・という構成でした。

この第3章で私が面白いと思ったのは、ヤコポ・バッサーノ『ノアの箱舟に入っていく動物たち』でした。旧約聖書創世記のノアの洪水の前にノアが箱舟を作って動物をつがいで船に乗せ、洪水を乗り切る話です。

もうひとつ印象に残ったのは、3枚の大きな絵が展示されている壁です。左から、ヤコポ・バッサーノ『懺悔する聖ヒエロニムスと天上に顕れる聖母子』、ヤコポ・ティントレット『聖母被昇天』、パオロ・ヴェロネーゼ『羊飼いの礼拝』でした。

宗教画って神を描いているので、そもそも有無を言わせぬ迫力があります。しかも大きいと一段と凄味を増します。3枚並んだこの壁には圧倒されましたね。

ヴェロネーゼ『羊飼いの礼拝』の上にいる天使が可愛かったです^^

ヴェネツィアの肖像画

私感で申し訳ないのですが、実は人物画があまり好きではなく、従って肖像画も今ひとつピンと来なくて、ほとんど素通り状態^^;

なぜか赤いビロードと思われる衣裳をまとった人を描いた作品が多く、この色と質感は個人的にとても好きなので、それが印象に残りました。

ルネサンスの終焉―巨匠たちの後継者

最後に目を引いたのは、ドメニコ・ティントレット『キリストの復活』でした。

キリストは十字架に架けられ息絶えて墓に葬られた後、3日目に復活したという記述が新約聖書にありますが、まさにその復活シーンを描いた作品です。

光に包まれたキリストと、周囲の闇の中で眠っている兵士や人々の姿の対比が聖書に度々出てくるフレーズ「あなた方は目を覚ましていなさい」を思い起こさせました。

光はキリスト教にとって象徴です。世界は光で始まることが聖書にも書かれています。

神は「光あれ」と言われた。すると光があった。

旧約聖書 創世記1.3

まとめ~芸術は祝福

絵画展を見る度に思うのですが、芸術は経済発展の賜物です。優れた文化・芸術の背景には必ずその国の経済的隆盛があります。

素晴らしい芸術に感動しながら、富は祝福だとつくづく思うこの頃・・・

リッチとは、心の豊かさが形となったもの。美しいものを愛し、芸術に生きることは、人間らしい生き方です。

さっ、お仕事頑張って、芸術の秋を満喫しますよ~。

展覧会概要

ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち

【会 期】2016年7月13日(水)~10月10日(月・祝)

毎週火曜日休館 ただし、8月16日(火)は開館

【開館時間】10:00~18:00

金曜日、8月6日(土)、13日(土)、20日(土)は20:00まで

※入場は閉館の30分前まで

【会 場】国立新美術館 企画展示室2E

〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Follow me!

この記事を書いた人

この記事を書いた人
Ina / 伊奈葉子
ピアノと音楽、自然とお茶時間をこよなく愛するInaこと伊奈葉子です。慶應義塾大学文学部卒業。詳しいプロフィールはこちら♪